アナログコンピュータ試作機

Electiric Differential EQuation Solver


 

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2022年に製作した試作アナログコンピュータの紹介

アナログコンピュータ

これはアナログ計算機の知識とプログラミングの技術を獲得・研究するために製作した試作のアナログコンピュータである。 大学一年次の前期から製作開始し、秋ごろに完成した。積分器6個、加算器3個、反転器4個、乗算器2個、矩形波発振器及び微分器からなるもので、6階までの常微分方程式まで解き得る。左はアナコン専用電源装置。電源回路まで中に組み込む空間的余裕がなかったので電源のみ別にした。予算の関係で筐体はシナベニヤやパイン材である。下の写真はパッチパネル部を開いた時の様子。いつものごとく適当すぎる配線だが故障することはあまりなかった。

アナログコンピュータ

 

 

演算精度は貧弱で、せいぜいフルスケールの±5%が限界であった。予算の都合上、積分コンデンサとして秋月電子で普通に売ってある安いポリエチレンフィルムコンデンサを選定したために漏れ電流が酷く、さらに抵抗器も誤差1%の金属皮膜抵抗を用いたからである。しかし、誤差は出ても何とか解関数を電圧波形として得て、オシロスコープやXYレコーダ(オークションで落札した旧理化電機製のもの)に出力させることができた。

アナログコンピュータ

 

アナログコンピュータ

積分コンデンサは0.1μと1nの両方をトグルスイッチで切り替える方式で、低速・高速両方対応できるのだが、積分器のモード切替用のスイッチングを電磁リレーで行っているため、高速繰り返し演算は行えず、単なる高速演算(即ち時定数だけ数ミリ秒にして、あとは低速型と同じように演算状態のままにし、周期的に初期条件に戻さない)しか行えない。 ゆえに例えば線形2階常微分方程式\(\ddot {y}=-\omega^2 y\)を解いて解の正弦波を観察するとき、振幅は急速に減衰してしまう。高速型の場合は数ミリ秒で波形消滅、低速型も30秒で10パーセントほど減衰したと思う。正弦波を得たい場合は適宜正のフィードバックを掛ける(つまり\(\ddot{y}=-\omega^2 y+\delta\dot{y}\)のように減衰を阻止する項を加える)ことで対応した。

乗算器が2個のみであるため、非線形微分方程式は非線形項の次数や数によって解けるものが制限されてしまうが、ローレンツ方程式やレスラー方程式、Van der Pol方程式といった比較的簡単な形なら非線形であっても対応できる。特に、J.C.Sprott氏の研究論文に載っていた、一連の代数的に簡単な形で表される3元連立非線形微分方程式(Sprott SQ〇 system:〇にA~Sの英字が入る)をこの計算機で解くことに夢中になった。 (参考文献 : 「Elegant Chaos : Algebraically Simple Chaotic Flows」 (Julien .C.Sprott, World Scienstific. 2010) ) 

アナログコンピュータの演算結果

これらは2次の非線形項が1つか2つのみである(!)にも拘らず、その解軌道は初期値鋭敏性をもつアトラクターを描く。それ即ちカオスアトラクターである。式の形に合わせてバナナプラグを結線し、高速モードでだらだら演算させ、XYモードに設定したアナログオシロに入力する。 そうすると相空間上に描かれる解の形状がオシロスコープに表示されるわけであるが、それがまた美しいので是非ご覧いただきたい。

アナログコンピュータ

 

アナログコンピュータ

アナログコンピュータ

(↑こいつはレスラーアトラクタ)

XYレコーダでグラフ用紙に描きだしたものの写真データも残っている。

これらの非線形システムとSprott氏の研究内容については同氏のサイトを参照して欲しい。

 

ちなみにEDEQSというのは、本ページ表題下の英文にあるように「電子式微分方程式求解機」の頭文字から適当にとった仮称であった。いまだに良い名前が思いつかない。 そうこうしているうちに本格的なアナログコンピュータの製作に着手し、ついにはそいつもEDEQSの名を冠する羽目になり、事実上の正式名称の扱いである。


 

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